強者弱者(39)

鞴祭、クリスマス

 九日、旧暦十一月八日、鞴祭、蜜柑漸く甘し。
 霜、雪の如し。広尾方面より電車にて墓地と龍土との間を青山一丁目に通ふもの、射朶裏の枯野に新兵の各個教練を見て、其挙動のをかしきを車窓越にあざみ行くは心なきしうちなり。
 弦月、蕭條たる枯木の梢にかゝりて光芒刃の如し。
 十日、虎ノ門の縁日、年の納めとて雑踏甚し。植木屋には梅、福寿草、雪割草などを並べたり。
 クリスマス近く、銀座の教文館、日本橋の丸善など舶来のカード眼も彩なり。明治屋、亀屋など、金髪碧瞳の佳人を迎へて、店頭の装飾春の如し。
 鮭、数の子、雁、鴨など、歳暮の贈答品市を走る。

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「鞴」は「ふいご」。金属の熱処理や精錬に用いる送風機のこと。鍛冶屋や鋳物屋で使われていたものですが、現在では現役として生き残っているのでしょうか。
鞴祭は、旧暦の11月8日に鞴職人たちが行っていたものだそうで、季語にもなっています。もちろん冬。
今年なら12月23日に当りますね。こんなサイトがありました。↓

http://www.chiba-muse.or.jp/MURA/kikaku/nencyugyozi/kaisetu/fuigomaturi.htm

「あざみ行く」は「浅み行く」と書くでしょう。いやしんだり、あなどったりする様。正に心無き仕打ち。

「射朶」は「しゃだ」と読んで、弓を射る際に的の背後に土を盛って山形に築いた所のことだそうです。当時の軍事教練には弓矢もあったんでしょうか。
鞴にしても射朶にしても、未だ武士道の仕来りが活きていたことを感じさせます。

虎ノ門の縁日は今でも盛んなんでしょうか。100年前は正月用の植木市だったようですね。このサイトによると、毎月10日が縁日の由。今度行ってみようかな~。↓

http://www.enjoytokyo.jp/OD004Detail.html?EVENT_ID=24710

 

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